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2019/01/31

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スポーツのもつ、小さいけれどたしかな力 ~体験型交流学習会 レポート

2018年12月22日(土)「スポーツのもつ、小さいけれどたしかな力」と題した体験型交流学習会がフットサルステージ(東京都多摩市)で開催されました。主催したのは認定NPO法人ビッグイシュー基金です。ホームレスの当事者によるサッカーチーム・野武士ジャパンの活動をはじめ、ひきこもり、うつ病、LGBTなどにより、社会的困難や不利を抱えている人たちが、フットサルの持つ力で心身の健康を取り戻し、社会復帰する意欲を取り戻すきっかけを作るためのイベントとして、2015年からダイバーシティカップに取り組んでいます。

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2018年8月には「ホームレス、不登校、女性の貧困、多様な人にスポーツの機会をつくる」をテーマに、実際にフットサルなどのスポーツの特性を活かして、社会的弱者の居場所づくりに取り組んでいる3つの団体から実践報告を兼ねた勉強会(https://j-futsal.jfa.jp/news/2018/10/17/2956.html)が開催されました。今回の体験型交流学習会は、その第2弾となる位置づけとして、2部構成により行われました。

第1部のダイバーシティサッカー体験会では、アイスブレイク(初対面の人同士が話しをするきっかけをつくり、緊張をときほぐすための手法)を活用したウォーミングアップからはじまり、参加者の混合チームによるミニゲームで汗を流しました。

第2部のダイバーシティサッカー学習会では、オープニングトークに3名の当事者(トゥレット症候群、双極性障害、ホームレス経験者)が登壇し、それぞれの経験やフットサルへの思いを語りました。

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右から、一之瀬徳之さん、菊地涼太さん、花渕信さん、ビッグイシュー基金・長谷川さん

トークイベントより、一之瀬徳之さんのコメント

「私は双極性障害という、以前は躁うつ病と呼ばれていた精神障害の当事者です。気分が落ち込むこともあれば、気分が高ぶる躁状態になることもあります。この症状と20年間向き合ってきました。現在、私はフットサルチームの運営をしています。メンバーは、うつ病等の精神障害事者向けの再発予防トレーニングや復職支援等のプログラムを提供する同じ施設の利用者やOBOGで構成されています。メンタルの病気になると、人と会うことに抵抗を感じたり、外出できずにひきこもりがちになるので、運動する機会が減って体力が落ちてきます。私はいつも「健全な精神は健全な肉体から」と言っているのですが、精神障害の場合は体調を崩すと気持ちも落ちてしまいますので、定期的に運動することのできる場が必要だと考えています。そして社会復帰した後は安定して就労を続けることが大切ですが、復職をしたけれど再発して、また辞めてしまうことが多い現状があります。そのため、社会復帰後に安定して仕事を続けるために、仲間とふれ合いストレスを発散できる場としてフットサルを活用してもらいたいと考えています。週末にフットサルという楽しみがあることで平日の仕事も頑張れると思うからです。そして、もうひとつ、精神障害があると孤立しがちです。親や友達にも相談できない、病院で先生と話はできるけれど時間は限られている、治って会社に復帰しても職場の理解がなく孤立してしまうことも多いです。そのため、みんなが気兼ねなく集まることのできるコミュニティとしてフットサルチームを用意しています。安心して帰って来られる場所、仲間が待っている場所を目指してチームを運営しています。先日、結婚したチームメンバーから『今の元気な自分がいるのは、このフットサルチームがあったからです。ありがとうございました』というメッセージをもらいました。感動しました。嬉しかったですね。」

トークイベントより、菊地涼太さんのコメント

「僕は、トゥレット症候群という、緊張すると声が出てしまったり、体を動かしてしまったりする障害があります。特に辛いのは汚言症という症状で公的な場で(意図せずに)卑猥な言葉や他人を罵るような言葉を発してしまうことです。僕はこの症状があることで、高校卒業をしてから2年間ぐらいひきこもっていたのですが、そんなときにも支えてくれる友達がいて、毎日家に来て言葉をかけてくれたことで救われました。僕が野武士ジャパンに参加したのは3年前になります。友達から登山に誘われたことがきっかけです。僕は行きたくなかったんですけれど(笑)。その頂上で、たまたまビッグイシュー基金のスタッフと知り合って、ホームレスサッカーに誘ってもらったんです。トゥレット症候群を抱えていることで、ひきこもっている時期が長かったのですが、スポーツが好きなことや人との関わりをもちたいと思い始めていたので勇気を出して初めて野武士ジャパンに参加しました。正直、どうなるんだろう?とすごく緊張しました。初めて会った方は僕の症状にびっくりされたこともあったと思いますが、それでも、みなさんが笑顔で温かい雰囲気で迎え入れてくれたので、居心地が良かったです。野武士ジャパンに参加したことで人とのつながりが増えたと感じています。僕が実体験として感じるスポーツの価値は、白熱してぶつかるときもありますが、勝利という目的を目指して、発達障害、知的障害、精神障害、LGBTやホームレスなどまったく関係なく、みんなが一緒になって楽しめるところにあります。」

トークイベントより、花渕信さんのコメント

「私はビッグイシューの販売者をやっていたのですが、野武士ジャパンに参加したのは2017年の5月からです。そのときは練習道具の準備を手伝うだけだったのですが、ボランティア参加しているうちにだんだん楽しくなってきて、私もボールを蹴りたいと思うようになって、サッカーの練習にも参加するようになりました。仲間が増えていくのが楽しく、嬉しいですね。以前は自分の部屋にひきこもっていることが多かったのですが、ダイバーシティカップに出させてもらえるようになってからは気持ち的にも違ってきました。練習は月に2回だけですが、みなさんと交流することができて、気持ち的にだんだんと落ち着いてきました。スポーツは勝敗がありますが、ダイバーシティカップはそういうことよりも、人との関わりなどを大事にしていると思っています。今日もみんなで一緒に試合をして交流が深まったと思います。」

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トークイベントの後は、グループトークの時間が設けられ、参加者が5名から6名のグループになってテーブルを囲み、「自分の今年を現す一言」や「オープニングトークの感想」をテーマに語り合いました。各テーブルからは、話に興味深く聞き入り、時には問いを投げかけている様子が伺えました。ダイバーシティとは多様性、つまり「人にはそれぞれに違いがある」ことを意味するように、この日の参加者も、年齢、性別はもとより、障害のあるなし、職業も肩書もバラバラ。会社員であったり、フリーランスであったり、学生もいました。体験型交流学習会に参加した目的も人それぞれのはずです。参加者一人ひとりが、この日に得たことや感じたことがホームグラウンドに持ち帰られ、「スポーツのもつ、小さいけれどたしかな力」は様々な形で広がっていくことでしょう。